2019年の年の瀬に、カルロスゴーン被告が極秘に日本を出国していたことが明らかになりました。
東京地裁もゴーン被告の弁護士も出国の事実を認識していなかったとのことで物議を醸しています。
ゴーン被告の逃走劇には『楽器ケースに潜んでいた』『パスポートを偽造した』など様々な情報が流れています。
今回は、カルロスゴーン被告の逃走経路や逃亡方法など明らかになっている情報をお伝えするとともに、今回の逃走劇をめぐる謎をわかりやすくまとめました。
Contents
カルロスゴーンが保釈条件違反で無断出国!
2019年12月31日、カルロスゴーン被告が極秘に出国していたことが明らかになりました。
カルロス・ゴーン被告が、海外への渡航を禁じられているにも関わらず日本を出国して、中東のレバノンに到着したと欧米の複数のメディアが伝えました。
ゴーン被告の出国については、政府関係者・弁護団とも寝耳に水の状態で事態を把握していなかったようです。
東京地裁「保釈条件は変更していない」
弁護団「何も知らない」
検察幹部「把握していない」
法務省幹部「確認中」
外務省幹部「把握していない」
ゴーン被告の保釈金15億円は没収となったとの続報も出ています。
カルロスゴーン逃走経路は?どうやって逃亡した?
ロイター通信などによると、ゴーン被告の逃走計画が練られたのは約3カ月前。
ゴーン被告の逃亡計画を実行するために、慎重に実行チームが集められました。
このチームには、ゴーン被告を自宅から、イスタンブール行きのプライベートジェットへと運んだ日本国内の共犯者も含まれていたとのこと。
ゴーン被告の逃走経路や逃亡方法、さらに、各紙で報じられている今回の逃走劇の協力者について、わかりやすくまとめると次のようになります。
逃亡1日目:『楽器ケース』に紛れて自宅を脱出!
12月29日、ゴーン被告の都内の自宅でクリスマスパーティーが開かれた
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楽団がゴーン被告の自宅を訪れパーティーで演奏をした
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楽団は演奏後ほどなくゴーン被告を楽器ケースに隠して移送した
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ゴーン被告は地方空港(一説では関西空港)に向かっをた(出典:BBC)
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ゴーン被告は新幹線で品川駅〜新大阪駅を移動
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新大阪駅からタクシーに乗り換え関西空港近くのホテルへをた(出典:日テレNEWS)
ゴーン被告は日産から依頼をうけた警備会社によって24時間監視下に置かれていました。
しかし、弁護団はこれを『重大な人権問題』と訴え2019年内に日産を刑事告訴すると表明したため、日産側は、24時間に近い形で続けていた行動監視を12月29日にいったん中止しました。
ゴーン被告は、監視が外れた直後の29日昼ごろに逃亡したと見られています。(出典:産経)
そして、午後4時半ごろ品川駅に姿を現し新幹線で新大阪駅へ移動。
ゴーン被告は新幹線を新大阪駅で降り、午後7時半ごろに駅を出てその後、タクシーに乗り換えて関西国際空港の近くにあるホテルへと移動しました。
そしてゴーン被告はこの日の深夜に関西国際空港からプライベートジェットに乗って出国したとみられています。(出典:日テレNEWS)
協力者①楽団になりすました準軍事的組織
複数報道によると、ゴーン被告の自宅を訪れた楽団は、準軍事的組織がなりすましたものだったと伝えられています。
この楽団はゴーン被告の自宅での演奏後、ほどなく楽器ケースにゴーン被告を隠し、地方空港(一部報道によれば関西空港)へと運びました。
具体的に何の楽器ケースなのかは明かされていませんが、身長165センチのゴーン被告を格納可能な大きさの楽器と想定されます。(出典:BBC)
協力者②民間警備会社に所属する元米海兵隊員
ゴーン被告を自宅からこっそり連れ出す際には、民間警備会社が協力していたとBBCが伝えています。(出典:BBC)
この民間警備会社は数カ月にわたってゴーン被告の逃亡を計画し、複数のチームに分かれて異なる国々で活動していました。
ゴーン氏の友人の話によれば、ゴーン被告の都内の住宅で開かれたクリスマスの夕食パーティーには、「米警備会社に所属する元米海兵隊員」ら、“救出作戦”のプロが居合わせていたとのこと。(出典:日刊スポーツ)
パーティー参加者は計画を知らされず、パーティー終了後はプロによってゴーン被告が楽器の箱に隠され移送されました。
さらに出国手続きもくぐり抜け、自家用ジェット機でトルコを経由して30日にベイルートに運ばれました。(出典:日刊スポーツ)
自家用ジェット機の操縦士ですら、ゴーン被告が搭乗していることを知らなかったと伝えられています。(出典:BBC)
逃亡2日目〜:日本出国しトルコ経由でレバノンへ
12月未明 ゴーン被告が自家用ジェット機で日本を出国
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12月30日朝 自家用ジェット機がトルコに到着・別の飛行機に乗り換え
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12月30日夜 レバノンの首都ベイルートへ到着 (出典:SankeiBiz・NHK)
ゴーン被告が向かった地方空港は明らかになっていませんが、一部のメディアは関西空港に向かったと伝えています。
関西空港からイスタンブールまでは飛行所要時間は通常12〜13時間です。
トルコのメディアによると、ゴーン被告が乗った自家用ジェット機は12月30日午前5時半に同国内の空港に到着。
ゴーン被告は別の航空機に乗り換えてレバノン入りしたもようで、国境警察にゴーン被告の入出国の記録はなかったといいます。(出典:SankeiBiz)
AP通信などによると、トルコの治安当局はゴーン被告の入国や出国について把握していなかったと説明しています。(出典:TBS)
トルコ当局にとっても寝耳に水の状況だったようです。
追記:トルコの治安当局は、パイロット4人と地上職員2人、貨物会社の職員1人の合わせて7人を拘束しました。
7人のうち数人は、プライベートジェットの離着陸で使われることが多い、トルコ最大都市イスタンブールのアタチュルク空港で働いている職員でした。
トルコの治安当局は、事態の重要性を踏まえて捜査に着手したとみられています。
(出典:TBS)
レバノンに到着したゴーン被告はキャロル夫人に迎えられ、31日の大晦日には家族でワインボトルをあけ乾杯する様子が伝えられています。
協力者③ゴーン被告の妻・キャロル夫人
ゴーン被告が保釈中に行方をくらませていた妻のキャロル夫人。
レバノンでゴーン前会長を迎え入れたのもキャロル夫人でした。
日本を出国するという計画の裏で動いていた重要人物は、妻のキャロル氏だったと複数メディアが報じています。(出典:BBC)
キャロル夫人は、夫との再会を『自分の人生の中で最高の贈り物』だったと述べるにとどまり、関与が疑われている逃亡計画については言及しませんでした。(出典:BBC)
ただ、以前2018年6月にはBBCの取材で『夫を取り返したい』と話していたそうです。
「夫を取り返したい。私のそばに居てほしい。私は夫が無実だと分かっている」(出典:BBC)
ゴーン被告は逃亡後レバノンで声明を発表しキャロル夫人の関与を否定しました。
「私の妻キャロルや他の家族が、私の出国に役割を果たしたと推測する報道があります。こうした推測は全て不正確で間違っています。私は独りで出国の準備をしました。私の家族は全く何もしていません」(出典:BBC)
当の本人たちは関与を否定しているものの、富豪であるゴーン被告がその資金力で、元軍人や救出の専門家の支援を受けた可能性はあり
仏メディアはこぞってキャロル夫人の関与があったと報じています。
協力者④レバノン政府関係者も関与?
レバノン政府は予めカルロス・ゴーン前会長の到着を把握していたと一部の海外メディアが報じています。
ー英紙インディペンデント
政府関係筋の話として、ゴーン被告の脱出計画について「レバノンの治安、政治関係者が少なくとも(実行される)数週間前には把握していた」(出典:JIJI.COM)
ーレバノン現地テレビ・アルナシェラ
ゴーン被告がベイルートの空港に到着した際、被告に「近い友人ら」が出迎えた。この後、被告は大統領と非公式に面会した。(出典:JIJI.COM)
一方、レバノン政府は公式には関与を否定しており、AFP通信に対し次のように説明しています。
ーレバノン大統領府高官
「ゴーン氏は大統領府に来ていないし、大統領に会ってもいない」(出典:JIJI.COM)
現地メディアと政府の発表には食い違いが見受けられます。
(1)レバノン政府がゴーン被告の帰国を拒む理由はない
そもそもレバノンはゴーン氏の生まれ故郷で、ゴーン氏はビジネスで成功したのちに地元レバノンへの投資や寄付に力を注いできました。
そのため、レバノン市民の多くは、ゴーン氏を英雄と称賛しており、日本での一連の逮捕や勾留を批判的に見ていました。
英紙によれば、レバノン政府はゴーン被告の同国送還を外交ルートで日本側に要請していたとも伝えられています。
そのため、レバノン政府は以前からゴーン氏を国内に迎える意向を示していたことになります。
(2)レバノン政府が直接支援した可能性は低い?
ただし、レバノン政府が直接支援した可能性は低いという意見も伝えられています。
レバノンの地元記者の1人は「レバノン政府の依頼で逃走支援を受ければ情報漏れにつながりやすい」として政府支援に否定的な見方を示しています。(出典:日刊スポーツ)
また、逃走支援についてレバノン外務省は「日本からの移動の経緯は知らない」と関与を否定しています。(出典:日刊スポーツ)
直接の根回しには関与しないが、受け入れ体制は整えていた、ということなのか・・?
カルロスゴーン被告の日本出国の方法は?
報道によれば、ゴーン被告の出国記録はなかったと伝えられています。
出入国在留管理庁のデータベースなどを確認したところ、ゴーン被告が日本から出国した記録はなかった(引用:NHK)
現在までの報道によるとゴーン被告は、楽器ケースに潜んで出国した、と伝えられています。
出国手口:ゴーン被告が楽器ケースに潜んで出国?
ゴーン被告が楽器の箱に潜んで出国したとすれば、空港でのエックス線検査などをどう突破したのかが問題となります。
後日の報道で、プライベートジェット機の荷物のX線検査が行われていなかったことが明らかになりました。
プライベートジェット機の場合、運行する会社や機長の判断で、荷物のX線検査を行わないこともあるとのこと。
プライベートジェット機の特別ルールを逆手に取った逃走劇だったようです。
カルロスゴーン被告のレバノン入国の方法は?
入国する際の手続きについては「彼は別の名前で入国した。カルロス・ゴーンという名前ではない」とレバノン治安当局は話していたと伝えられています。
レバノン外務省や治安当局は合法的な手続きを経たと説明しています。
ーレバノン外務省筋
「(ゴーン氏は)合法的に入国した」(出典:JIJI.COM)
ーレバノン治安当局
「レバノンに合法的に入国した人物については、法的措置の対象にならない」(出典:朝日デジタル)
ゴーン被告が入国手続きで利用したパスポートや身分証明が何なのかについては、様々な憶測があります。
ゴーン被告のパスポートの謎
ゴーン被告がレバノン入国時に使用したパスポート(身分証明)が何なのか、様々な憶測があります。
各メディアが報じているところをまとめると以下の可能性が指摘されています。
- 企業経営者に認められる場合がある複製パスポート
- レバノンで発効された外交旅券
- フランスのパスポート
- 別人になりすました偽造パスポート
このなかで最も有力視されているのがフランスのパスポートです。
元会長はフランスから旅券を2通発行されており、逮捕当初は弁護団が保管していたものの、逃亡当時はフランス旅券を1通所持していた(出典:BBC)
なぜ、ゴーン被告は逃亡時に旅券を所持していたのか。
その理由は、ゴーン被告が日産の役職を解かれて日本の在留資格の証明書を失った結果、入管法の規定で旅券の携帯義務が生じていたため。(出典:BBC)
東京地裁は2019年5月、中身が見える鍵付きの透明ケースに入れたフランス旅券1通の携帯をゴーン被告に認めました。
ただし、透明ケースの鍵のダイヤル式ロックの番号は弁護団が管理し、ゴーン被告には伝えていなかったとのこと。(出典:BBC)
いずれにしても、ゴーン被告が鍵付きケースに入ったフランスの旅券を携帯しており、レバノン入国時には何らかの方法で、鍵のダイヤル式ロックを解除した可能性がありそうです。
ゴーン被告の入国手続きについてレバノン国務相は次のように話しています。
ーレバノン国務相ジュレイサティ氏
「彼(ゴーン前会長)はフランスのパスポートとレバノンの身分証をもって合法的に入国した」(出典:朝日デジタル)
カルロスゴーンの今後はどうなる?
ゴーン被告の逃走劇は国際問題として扱われるため、今後の司法は法務当局同士のやりとりになります。
通常、他国の被疑者を当国が引き渡す義務はありません。
国同士が被疑者を引き渡すケースとしては『犯罪者引き渡し条約』を国家間で締結していたケースですが、レバノンと日本の間では締結されていません。
そのため、当局を通じた引き渡しの可能性は現段階では低いため、ゴーン被告もそれを狙ってレバノンを選んだのでしょう。
今後の続報が引き続き注視したいと思います。